「話は後にするとして、早く食べようか」

朝比奈さんはジャケットを椅子にかけると腰を下ろした。

「朝比奈さんのお口にあえばいいんですけど…」

あたしも椅子に腰を下ろした。

朝比奈さんが箸を手に取って親子丼を口に入れた。

ほとんど初めて作った料理は、果たして彼の口にあっただろうか?

「美味しいよ」

朝比奈さんが言った。

「そうですか、よかったです…」

あたしはホッと胸をなで下ろすと、親子丼を口に入れた。

今朝の挽回ができてよかった。

夕飯を終えて後片づけをしようと空っぽになった皿にキッチンへと持って行こうとしたら、
「ああ、後片づけは俺がやるから」

朝比奈さんに止められた。

「いえ、後片づけもあたしがやります」

あたしはそれを断ると、皿をキッチンへと運んだ。
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