後片づけを済ませると、
「何かあった?」

それまでソファーに座ってテレビを見ていた朝比奈さんに声をかけられた。

「何がですか?」

あたしは聞き返した。

「いきなり夕飯を作ったから何かあったのかなって…」

そう言った朝比奈さんはかなり困惑した様子だった。

あたしは彼のところに歩み寄ると、その隣に腰を下ろした。

「これで仕事を辞めて家庭に入ったら何もすることがないじゃないですか。

家事のほとんどは朝比奈さんがやっている訳ですけれども、それじゃどうなのかなって思いまして」

あたしは言った。

「だから、夕飯を作ったの?」

そう聞いてきた朝比奈さんに、
「あたしも家事を覚えようと思っただけです」

あたしは答えた。
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