「順序は逆になってしまったけれど結婚して、思いが通じあって…なのに、関係は夫婦じゃなくて恋人のままで止まっている。

よくよく考えたら、あたしは欣一さんのことを何も知らないなって思ったんです。

猫アレルギーだってことも最近知りましたし…」

「そんなにも俺のことを知りたいの?」

そう聞いてきた朝比奈さんに、
「ええ」

あたしは首を縦に振ってうなずいた。

「さすがに1度に知るのは無理なので少しずつ、それも時間をかけて欣一さんのことを知って行きます」

そう言ったあたしに、
「なるほどね…。

それで今朝、手伝うことがないかって聞いてきたんだ」

朝比奈さんは納得したと言うように呟いた。

あたしたちの間に沈黙が流れた。

ムチャにも程があったか…。

結婚してからだいぶ時間が経つのに、朝比奈さんのこと知りたいと言ったら戸惑うのも仕方がないよね…。
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