「そのまんまでいいんじゃない?」

沈黙を破るように、朝比奈さんが言った。

「えっ?」

聞き返したあたしに、
「小春ちゃんはそのまんまでいいって言ったの」

朝比奈さんが答えた。

「そのまんま、ですか…?」

「いつも冷静で素っ気ない態度ばかりとるけど、好きなものに対しては好きだって言う小春ちゃんのままが俺は好きだよ」

そう言った朝比奈さんに、あたしの心臓がドキッ…と鳴った。

「き、欣一さん…」

「俺も本当のことを言うと、小春ちゃんのことはまだよく知らないんだ。

これからの時間は長いんだから、お互いのことを少しずつ知って理解して行けばいいと思うよ」

朝比奈さんはポンと、あたしの頭のうえに手を置いた。
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