「そうだ、小春ちゃんに渡したいものがあったんだ」

朝比奈さんはあたしの頭のうえに置いていた手を離すと、何かを取り出した。

「はい、最新刊」

そう言ってあたしの前に差し出されたのは、この間見た映画の原作コミックの最新刊だった。

「えっ、何で!?」

あたしは驚いて、最新刊のコミックと朝比奈さんの顔を交互に見つめた。

最新刊が発売されるのは今から1週間後だ。

朝比奈さんはエヘヘとイタズラっ子のように笑うと、
「いわゆる、編集者と言う立場を生かしたんです」
と、言った。

「…それって、職権濫用(ショッケンランヨウ)になりませんか?」

と言うか、大丈夫なんですか。

そう思っていたら、
「編集長にはちゃんと許可取得済みです」

朝比奈さんが言った。
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