思わぬ結末があったけれど、結婚式は無事に終わった。

その日の夜、あたしたちはホテルの一室にいた。

「まさか、彼が小春ちゃんからのブーケを受け取るとは思ってもみなかったな…」

バスローブ姿の朝比奈さんがバスタオルで髪をふきながら言った。

「そうですね、驚きました」

先にお風呂を済ませたあたしは同じくバスローブ姿で、ベッドのうえに座って文庫本を読んでいた。

「ねえ、小春ちゃん」

朝比奈さんがこちらの方に視線を向けてきた。

「何ですか?」

あたしは文庫本から顔をあげた。

「もう式を挙げて、夫婦になったからいいよね?」

朝比奈さんがあたしの隣に腰を下ろした。

「えっ、はい?」

訳がわからないあたしの手から朝比奈さんは文庫本を抜き取ると、
「俺、ずっと我慢していたんだよ?」

あたしの顔を覗き込んできたかと思ったら、そんなことを言った。
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