何よ、誘ってきたのは自分の方からじゃない。

そう思った瞬間、ドキドキと心臓が早鐘を打ち始めた。

「でも忘れないでくださいね」

心臓がドキドキとうるさい中で、あたしは言葉を紡いだ。

「…あたし、初めてなんですから」

我ながら何を言っているんだ、あたしは。

と言うか、宣言をする必要なんてあるのだろうか?

そう思っていたら、朝比奈さんはあたしを押し倒した。

視界に天井と朝比奈さんの顔が入ってきた。

朝比奈さんはあたしを見つめると、
「優しくできるように努力をします」
と、言った。

それに対しても、あたしの心臓がさらにドキドキと加速を増した。

もうすでに受け入れる覚悟はしたと言うように、あたしは彼の背中に両手を回した。

朝比奈さんは返事をするように、またあたしと唇を重ねた。
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