今、ここにいない彼に責任を押しつけてもどうにもなる訳がないことはわかっている。

一瞬でも考えて、心配してしまったあたしが悪いのだ。

「何か悩みでもあるの?」

そう聞いてきた伊勢谷さんに、
「特にありませんが…」

あたしは首を横に振った。

「とりあえずはさ、仕事のことは忘れようよ。

仕事のことを忘れて、パーッと社員旅行を楽しもうよ。

こんな高級旅館はもう2度と泊まれないんだからさ、ね?

田ノ下さんもたまにはハメを外そうよ」

伊勢谷さんが笑いながら言った。

「そうですね、楽しみましょう!」

あたしは首を縦に振ってうなずいた。

どうせ朝比奈さんは出張で家にいないんだ。

今日は彼のことは忘れて、思いっきり羽を伸ばして、社員旅行を楽しもう!
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