宴会も中盤になってくると、騒がしくなってきた。

酒の酔いが回ってきたと言うことも、少しは関係しているのかも知れない。

「田ノ下さんって、今年でおいくつなんですか?」

「はい、25になります」

あたしが話をしているのは、隣のK市で働いているパートのおばさんたちだ。

「かわいいわねー、息子の嫁に欲しいわ!」

きゃっきゃっと笑っているおばさんたちに対して、あたしはありがとうございますと小さくお礼を言った。

…嫁に欲しいと言われても、結婚しているんですけどね。

しかも、夫は父親の親友の息子である。

「田ノ下さん、楽しんでますかー?」

すでに酔っ払っている伊勢谷さんがあたしたちの間に入ってきた。

「は、はい…」

そんな彼の様子に、あたしは呟くように返事をすることしかできなかった。

伊勢谷さん、大丈夫かしら…。
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