どこかの貴族がお忍びで泊まりにきてもおかしくないかも知れないな。

そう思いながら手を洗うと、目の前の鏡に視線を向けた。

一重の丸い目、日本人に多く見られると言う団子鼻、ピンク色の薄い唇、顔立ちはどちらかと言うと丸顔だ。

たいして美人でもなければ、ブスでもない。

メイクの仕方によっては化けることもできるかも知れない…と思うけど、仕事をする時は衛生の関係上でマスクを身につけるし、何よりめんどくさいからしないと言うタイプだ。

身長も152センチと小柄なので、よく人から高校生か大学生に間違われる。

「結婚しようと思った要素がどこにあるんだろう?」

あたしは呟くと、鏡の中の自分から目をそらした。

トイレを出て宴会場に戻ろうとしたら、
「あれ?」

聞き覚えのある声に、あたしは振り返った。
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