恋
「朝比奈さんが出張だと言うことを聞いたので…」

「伝えづらくなっちゃったってことかな？」

あたしの話をさえぎるように、朝比奈さんが聞いてきた。

いや、あなたが出張でいなくなるなら伝えなくてもいいかと思ったんです。

「まあ、はい…」

本当は違うけれど、言い訳するのもめんどくさいので首を縦に振ってうなずいた。

「あー、何か悪いことをしちゃったな」

朝比奈さんは呟くように言うと、ガシガシと後頭部をかいた。

「朝比奈さんも泊まっているんですか？」

そう聞いたあたしに、
「うん、泊まってるよ。

部屋は３１０号室、よかったらきていいから」

朝比奈さんは嬉しそうに笑いながら答えた。

マジですか…。

と言うか、編集者って儲かるんですね…。

それとも大手出版社に勤めているから、こんな高級旅館に泊まれるんですか…。

すご過ぎるだろ、『葉月出版社』様は。
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