部屋に入ると、すでにふとんが敷かれていた。

「よいしょ」

そのうえに伊勢谷さんを寝かすと、あたしは息を吐いた。

「あー、疲れた…」

肩をコキコキと動かしているあたしのことなんか気づいていないと言うように、伊勢谷さんはスースーと寝息を立てて眠っていた。

「お風呂に行ってこよう」

仕事が終わってからすぐきたこともあってか、それとも伊勢谷さんのお世話をしていたせいなのか。

どちらが原因なのかは全くよくわからないけれど、疲れてしまった。

「伊勢谷さん、お風呂に行ってきますね」

眠っている彼に声をかけると、
「――んー…」

返事ととらえていいのかよくわからない声が返ってきた。

トートバックから下着を取り出して、クローゼットから浴衣と手ぬぐいとバスタオルを取り出すと、鍵を持って部屋を後にした。
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