A girls meeting
「なんだ、そんなことか。勿論いいよ。でも、塾からはちょっと遠い場所でしないと、俺クビになっちゃうからさ」
景子が思っているよりもあっさりと高柳は了承した。
「そこは、勿論です。私辞めたてホヤホヤですし」
高揚した気持ちを前面に押し出さないように気をつけながら、景子は言う。しかし声が震える。
「ホヤホヤって、使い方違わないか?」
クスクスと笑いながら高柳は言った。
「違わないですよ」
「そうかな?まあ、いいや。それで、景子ちゃんは何が食べたいの?」
「何って……何をですか?」
話題を元に戻され、質問された景子は困惑してしまう。
アルバイトをしていない高校生は、お小遣い制でやりくりをしており、友人と遊ぶ時にはなるべくお金を使わないようにファーストフードや五百円以内で収まるファミリーレストランで何時間も滞在するといった遊び方しかしてこなかった。
高柳のような大学生の遊びを景子は知らない。
「イタ飯とか、中華とか」
困っている様子が電話越しに伝わったのか、高梁が助け船を出した。
高柳のこういうところが景子は大好きで、大人と子供だと差を見せつけられているようで苦しい。
「先生お金持ちですか?大人ですね」
冗談半分、本気半分で、景子は言った。やはり大学生と高校生では世界が違うと改めて思う。
「殆ど君の授業料から出たバイト代だけどね」
そんな景子の気持を和らげるように高柳は答えた。
確かに自分の親が支払った授業料から高柳のアルバイトの給与は出ている。
「あれ?じゃあ、私のお金でご飯食べるという事になりますか?」
「そういう事になるね」
「じゃあ、高級フレンチがいいです」
「分かった。イタ飯ね」
「先生、話聞いてました?」
「聞いてたよ。可愛い女の子の話を俺が聞き逃す訳ないじゃん」
冗談めいた声色で、高柳は笑いながら自分のあいている日程を景子に告げる。
その後あっさり景子と高柳は日時と待ち合わせ場所を決めて電話を終えた。