A girls meeting
デザートを食べ終え、景子と高柳は店を後にする。
「もう八時半か」
腕時計を確認しながら、高柳は言った。
普段の景子ならもう少し遊んでいる時間なのだが、高柳は駅へ向かって歩き始めている。
「もう帰りますか?」
「そうだね。大学生になるといえども、景子ちゃんはまだ未成年で高校生だからね。ご両親も心配すると思うし」
まるで保護者のような口調で言う高柳を見ていて、このままでは疎遠になってしまうことが確実だと景子は思った。
確かに景子は生徒のままでいれば、高柳は先生の仮面をかぶったまま景子に今まで通り接するだろう。
しかし、景子が求めている事は、先生である高柳と対等に恋愛をする事だ。
「先生……」
意を決して、景子は言葉を発する。
言ってしまい、失敗すれば疎遠どころか、せっかく手に入れたアドレスも使うことも出来なくなるだろう。
「どうしたの?」
「私……」
声が震えた。
生まれて初めて人に向かって自分の心の中のどうしようもない欲望を伝える。
拒絶されたらどうしよう。
気持ち悪いと思われてしまったらどうしよう。
相手にされなかったらどうしよう。
都合のいい言葉で誤魔化されたらどうしよう。
尋常ではない程の不安が胸中に渦巻いていた。
「先生が好きです」