A girls meeting


「やっぱりさ、他にもサークル見た方がいいと思う」


 帰り道、高柳が景子に言う。


「どうしてですか?」


急に言い始めた高柳の言葉に驚きながら景子は尋ねた。


「いや、だって他にも景子ちゃんの気に入るサークルあるかもしれないじゃん」 


尤もらしい回答に、景子も頷くしかない。


「そうですよね。今日は先生のサークル楽しかったです」


「そうか。よかったよ」


 笑顔で手を振って別れたが、不安が胸中に渦巻いたままの別れだった。



その日を境に高柳と気まずい雰囲気が流れている。


LINEをしない訳でもない、電話も毎日している。



しかし、高柳と話していると幸せそうな高柳の顔と美しい井上先輩の顔が景子の中に再生されるのだ。



景子の頭に井上先輩の顔が描かれるたびに、高柳との距離が離れていくような気がする。


実際に高柳も少しずつではあるが、態度が微妙になってきているように思えた。


もしかしたら、井上先輩のことをまだ好きなのかもしれないと思うと、何も知らず高柳に恋をしていた頃にはなかった感情が景子の中にふつふつと芽生えている。


「それは嫉妬ってやつですね」


電話先で真弓が冷静な声色で言った。


「そんなの知ってるよ!どうしよう。別れたくない」


泣きそうな声で言う景子に真弓はうーんと唸る。


「正直に言うしかないんじゃない?この間の新歓で、見せられちゃいました。先生の元カノ。ってさ」


「そんなの言えないよ。終わってることみたいだし」


「いやいや、言った方がいいって。よほどのアホ男じゃない限り、そういうのって言えば解決するし」


 今までに付き合った男の中にそういう男がいたらしい、思い出したようで真弓は電話先で「あれはなかった」と小さく呟く。


「でも、先生他にもサークル見ろって言ってたし。なんか来てほしくないのかも」


「見てないから何とも言えないけど、なんかあったんじゃね?やっぱり聞いた方がいいんじゃないの?」


「そうかな……」


「そうだよ。話してみれば、意外とすんなり解決するかもよ」


「分かった、今日電話してみる」


電話を切った後、景子は高柳に文章を作成し送信する。


「今日話したい事があるので、会えますか?」


高柳は個別指導塾のアルバイトの時間である為、返信は一時間後くらいになるだろう。


その間に景子は手つかずになっていた大学の課題をリストアップしたりなどしながら、ゆっくり過ぎている時間の中を過ごした。


視線は常にスマートフォンの方に向いている為、集中が出来ない。


一時間後。


高柳から電話がかかってきたので、景子は恐る恐る電話に出る。


「もしもし?」


「話したいことって何?」


少しばかり冷たいような声色なのは気のせいだろうか。


「会って、話がしたいです」


「……分かった」


時間と場所を指定し、約束をとりつけると景子は電話を切った。


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