A girls meeting
約束の三分前に景子は約束の場所に到着する。
夜の地元の駅は、新宿駅に比べ人が少ない。
電車が来るたびにアルコールによって頬が染まったサラリーマン達が改札を通りすぎて行く様子を眺めながら、景子は高柳の姿を捜した。
「景子ちゃん」
声をかけられ振り返ると高柳が立っていた。
「先生」
「ごめん。予想してたよりも早く着いてカフェ入ってた」
「いいえ。すいません。急に呼びだしちゃって」
「いやいや、いいよ」
どこかしら他人行儀になってしまうのは、頭の中にこびりついて離れない井上先輩の顔だった。
景子と高柳は春休み中に一緒に過ごしたファミレスの中に入り、席につく。
「……」
「……」
気まずい雰囲気が二人を包み、ドリンクバーだけを注文して交互に飲み物を取りに行った。
「それで、話って?」
先に切りだしたのは高柳だった。
「あの……」
おずおずと話始めた景子。高柳が緊張したような表情で景子を見つめている。
「……」
「あの……この間の新歓で……先生の昔の写真を見せてもらったんですけど……」
「ああ、広木(ひろき)から?」
あの男の先輩の名前は広木というのかと景子は改めて知った。
「はい。それで……一緒に井上先輩と写ってる先生がすごく楽しそうで」
「井上先輩?……ああ!井上先輩!」
「はい。それで焼きもちやいちゃって、面白くなくて微妙な態度とってごめんなさい!」
頭を下げて景子は言う。
「……それだけ?」
「はい」
「本当に?」
「はい」
何度も確認する高柳に、景子は首を傾げながらも頷いた。