A girls meeting
「よかったー!最後の砦だったんだ。じゃあ、あと三十分後にマルイの方にあるスタックスに集合。そこでワンフロア貸し切って、やるらしいから、パーティー」
「何それ?マジ、金かけてんね!」
電話をしながら、歩き始めた。
左手にぶら下がる、衣服の入った袋を一旦どこかのコインロッカーに預けないと、邪魔になることは目に見えている。
渋谷駅のハチ公出口付近に大きな荷物の入るコインロッカーがある事を思い出し、真弓は渋谷駅を目指して歩き始めた。
「参加料二千円とるらしいからね。あ、でも真弓は無料でいいよ」
「ラッキー。って言いたいところだけど、ちゃんと払うよ。タダ飯程怖いものはないって、教えられてるからね」
「誰にだよ」
「歴代の男たち?みたいな?」
「うわー。男の見る目がない事自分で暴露したね。しかも、前の彼氏と別れてから何年たってるんだよ」
「うるさいよ!一年ちょっとだけじゃん。合コンの日々は意外に辛いんだぞ。じゃあ、荷物どうにかしたら、そっち向かうわ」
ケラケラ上機嫌に笑う友人との電話を切り、真弓はスクランブル交差点を駆け抜ける。
せわしなく歩く人々はそんな真弓の姿に目をとめることなく、それぞれの目的地に向かっていった。
駅前のコインロッカーに買い物袋を押し込み、居酒屋のキャッチを回避しながら真っ直ぐ交差点を走り抜ける。
スターバックス店舗の右側の通りまで到達し、再び歩き始めた。
数分も経たないうちに目的の場所へ到達すると、寒そうに足踏みをしながら友人は真弓のことを待っていた。
「ゆかり、ごめん。遅くなった」
「大丈夫、大丈夫。参加時間とか自由だから」
笑いながらゆかりはドアを開け、真弓を中へ招き入れる。
赤く敷かれた絨毯がエレベーターまでの道のりを示していた。
「なんか、カラオケ店って感じしないね」
「そうだね。うちも今日初めてここ来た」
エレベーターの中へ入り、ゆかりは二階のボタンを押す。
扉が閉じ、その箱はゆっくりと上昇していった。
扉が開いた瞬間、真弓は一瞬にしてその世界に圧倒される。
目の前に広がっているのは異国の地であるのかと思うほど、日本人が少ない。
広い会場の中で、多種多様の国籍の自分と同じくらいの歳の人間が談笑し、騒いでいる。
「参加費はいいよ」」
圧倒されつつも財布を取り出している真弓にゆかりは言った。
「受付はもうしてあるから、このシールに名前と出身国書いといて。彼氏のとこ行ってくる」
ゆかりに渡された何の変哲もない真っ白な長方形のシールに、真弓は共に渡された油性ペンで名前と出身国を書き込む。
書き終り、ペンを受付に渡した後に友人の姿を探すが彼女の姿はそこにはなかった。
「え、うそ。ゆかり?」
人の中に埋もれてしまった友人を探すが、広い会場を見渡しただけでは見つけることが出来ない。
まるで不思議の国にでも訪れてしまったのではないかと思う程、そこは日本からかけ離れていた。