A girls meeting
「はい、緑山景子です」
思わず声が裏返ってしまった。羞恥の為に頬が赤く染まるのを景子は感じる。
「あはは、景子ちゃん。高柳です」
電話で聞く高柳の声は、塾で聞いていた時よりも低く近い。
「こ、こんばんは。塾お疲れ様です」
「おー、ありがとう。今何してた?」
「い……今ですか。今は、ダラダラしてました!」
「そうだよな。もう受験も終わったしダラダラしちゃうよな。俺も二年前そうだったな」
懐かしそうな声色が電話越しに伝わってくる。
自室で高柳の声を聞いているという事実がどうしても不思議で、景子は思わず笑ってしまった。
「どうした?」
「いや、なんか変な感じして」
「変って?」
「だって先週まで先生と一緒に勉強してたのに、今はのんびり電話してるから。なんか変」
「確かにそうだよな。先週まで受験生だったし。俺も合格してくれて本当に嬉しいよ」
「先生のおかげです……先生がいてくれたからですよ……だから……あの……」
「……?」
「……」
沈黙が続く。
告白してしまっていいのだろうか。
ここで告白してしまえばせっかく電話出来る仲になったというのにも関わらず、関係が終わってしまう。
「どうしたの?景子ちゃん?」
「あの……」
「ん?」
「合格祝いしてほしいな、なんて」
冗談めかした声色で景子は言う。
断られても「冗談ですよ」と逃げられるように。