外月小学校放課後怪談倶楽部
濃いメイクの若いOLや、くたびれた中年男性が椅子に腰かけている中、見慣れた男をイズミは見つけた。
『お父さん!』
『え?イズミ?』
腹に頭突きを食らわす勢いで飛び込んできたイズミを、イズミの父はうまく受け止めた。
『どうしてここに……』
『えへ、社会科見学で来たんだ。本当は学校の方では来る予定無かったんだけど』
『駄目だろ〜、抜け出しちゃ。危ないし』
父親らしくそう言うも、セリフとは裏腹に嬉しそう。
『その時は迷子になったって言うか、お父さんに誤魔化してもらうよ。それに、ちかもあつこもいるから大丈夫!』
『ちかちゃんとあつこちゃんまで……』
『ごめんなさい、おじさん。でも私達、働いてるお父さんのかっこいい姿、見たかったの』
ちかが甘えた声を出す。
美少女はこういう時役に立つな、とイズミは思った。
『……仕方ないな。吉野さんと川谷さんのいる課は、8階だから行っておいで』
そして、こんな分かりやすい演技に騙されるオッサンもどうなんだ、と危機感の無さに呆れてしまう。
ちなみに、吉野と川谷はそれぞれちかとあつこの名字。つまり二人の父親だ。
『ありがとう、お父さん。お仕事頑張ってね』
『あぁ、今日も頑張るよ。身を粉にする気でね』
上に行くボタンを押し、エレベーターが4階に来るのを待つ。
『イズミ〜、なんかイズミのお父さん変わった?』
待ってる間、せっかちなあつこが聞いた。
『え?』
『前会った時、顎にホクロがあったと思うんだけど』
毎日会っているイズミには、その変化はよく分からない。
『ヒゲで隠れたか、なんか自然消滅したんじゃない?そんなの知らないわ』
イズミは適当に答えた。
会話をしてる間に、エレベーターは上昇していく。
『あ、そろそろ8階……え?』
エレベーターは8階には止まらず、どんどん上に上がっていく。
『壊れてるのかな……』
『えー、どこまで行くのこれ』
結局、止まったのは最上階だった。
チーン
ゆっくりと扉が開いた。