さょなら大好きな人
学校を出て大通りを抜けた加奈は、交差点に出た。
信号は赤。
仕方なく止まって、とめどなく行き交う車の群れを見つめていた。
ぼんやりとしていると、不意に目の前を一人の男の子が横切った。
「こら、待ちなさい!」
突然聞こえた怒鳴り声に思わず耳を傾ける。
プ―――ッッ
突っ込んでくる大型トラック。
耳を突き刺すようなクラクション。
目の前から光が消えた。
「もう、危ないっていつも言ってるでしょ!」
「ごめんなさい。」
加奈はふらつく足で地面を踏みしめながら、なんとか正気を保っていた。
暗い過去が蘇ってくる。
全ての音がシャットダウンされている中、道行くおばさん達の会話が聞こえてきた。
「危ないわね〜。」
「ここ、1年前にも事故があったのよ。確か高校生の男の子が、トラックに引かれそうになった子供を助けようとしてはねられてしまったの。幸いその子供は無事だったけど、男子生徒は運ばれた病院の中で息を引き取ったそうよ。」
胸を刺すその声に耳を傾けながら、加奈は黙って目を瞑った―――。