箱庭センチメンタル
突如として、襖が開いた。
同時に私は深々と頭を下げる。
「雛李さん、おはようございます」
相手の顔を確認する前に、まずは声がかかるのを待ち、それから顔を上げる。
「おはようございます、幸嶺(さちみね)お祖母様」
無機質な動作で見上げれば、満足そうな顔が瞳に映った。
ああ、今日は“正解”だ——。
「そう、それで良いのです。
貴方はお人形のように美しい。他の者とは比べるまでもない、わたくしの生涯かけた最高の作品です」
「そのような勿体無きお言葉、光栄でございます」
思ってもいない言葉を口にして、再び頭を下げる。
「朝食の時間です。雛李さん、貴方はここでとりなさい。
わたくしは皐さんの部屋へも寄らなければなりません」
「承知いたしました」
私の言葉を聞き届け、お祖母様はあくまで静かに出て行った。
途端、静寂とともに訪れた暗い空間。