箱庭センチメンタル
ほっと息をつき、乗り切ったと額に浮かんだ汗を軽く拭う。
静か過ぎるここは、自身を表しているようにも思えてふと孤独を感じた。
もちろん、そんなことを人に打ち明けられるはずもなく。
言えば一から仕置きを叩き直されるだろう。
だからこそ、表立って自身を晒すことなどできないのだ。
尤も、自分が本来どういった性格で、何を好み、本当はどう思っているのか、分からないのだから意味はない。
他の何より、知らないことの多い自分。
難儀なものだと遠く思った。
そっと障子を開ければ、広がる庭に大きな池。
池の中では、数匹の立派な鯉が穏やかに、ゆらりと揺れるように泳いでいる。
これを縁側の定位置に座り見るのが、恐らくは唯一気の休まる時間。
このほんの数分が、私にとっての幸福。
何もかも忘れることができる、この上ない満悦の時なのだ。