箱庭センチメンタル
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「起きてるか?なあ、雛李。おーい?」
数日が経ち、ここでの生活にも慣れてきた気がする。
選択肢を持たない私は結局、この家においてもらっていた。
「聞こえていますよ」
「お、今回は反応した」
真也の呼び声に、皿洗いの手を止めて応答すると胸をなで下ろす姿がそこにはあった。
一転、心配そうな表情で私の額に手を当ててくる。
「あの、何か?」
「んー?いや、ここ最近ずっと反応鈍いから体調不良じゃないかと」
「熱などございません。ご心配なく」
言いつつ、皿洗いを再開させようと蛇口に伸ばした私の手は何故か空を掴んだ。
……否、理由は分かっている。
真也が私の手首を掴んで唐突に歩き出したからだ。