箱庭センチメンタル



『ま、そこはやっぱガキだから簡単なのよね。バカだから何でも信じちゃうしさぁ〜』



幼すぎたこの頃の私には分からなかったけれど、成長するにつれて段々と理解できるようになった。


私はバカだから、騙されただけなのだ。



子供ゆえの純真な心が私にもあったのかと今にしてみれば思えるけれど、それでも、何年経っても受け止められないものはあるのだと知ったのはここ最近のことだ。


あの時のことは今でも鮮烈に覚えている。



涙が出ない。


怒りもない。


悲しい、悔しい、苦しい、虚しい、辛い、痛い、許せない……


それらの感情は微塵も湧かない。



慕っていたはずの彼女に裏切られても、私は何も感じなかったのだ。


ただ、興が削がれたような心持ちで、小さなため息をひとつ吐きながら気の毒に思うだけだった。



……何だ。


結局、この人も菊ノ宮という大きな存在越しに私を見ていただけ。


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