箱庭センチメンタル
ああ、なんて可哀想な人なのだろう。
おそらく私に遺産の分配はされないだろうことも知らず、仕方なく私の相手をさせられていただなんて。
誰しも平気で嘘をつき、大人になれば欲が出る。
聖人君子などどこにもおらず、理想は現実にはあり得ない。
私がそれを思い知らされたのはわずか7歳の時だった。
幻滅した。
菊ノ宮という器の中で、小さくまとまる人間、取るに足らない世界、そこに潜んだ悪意、それに騙された自分に対して。
それから間も無くして、世話役だったその女性は解雇となった。
最後に私を見た彼女の瞳は、怒りを孕んでいた。
そうなるでしょうね。
彼女のことをお祖母様に告げ口したのは、他ならぬ私なのだから。
何も持たない私、幼すぎた可愛い妹、規律を重んじる親族。
あるべき形で成り立っているこの小さな箱庭の中で、秩序を乱すものがあってはならない。