箱庭センチメンタル
食事が終わり、勉学の時間。
ただ、持ち込まれる数多の紙切れを塗りつぶし、ノルマをひたすらこなすのみ。
教師すらいない空間。
取り残されたように、せっせと空白を埋めていく。
面白みなどあるわけがない。
実感させられるのは、“自分”ただ一人。
一息ついたのは数時間も先のこと。
解き切ったそれらの確認をするでもなく、障子の向こう側へと視線を送る。
ここからでは、青々とした空は覗ける程度しか窺えない。
けれど、良いのだ。
手入れの行き届いた庭。
緑の中に円を描くが如く落とされたような池に揺蕩う、鯉の影。
大小様々、模様のはっきりと浮く、色味の違うそれらはまるで、錦絵を立体で見ているような気にさせる。
その手のものには滅法疎い私が見ても、明らかに上等なものだと一目で分かる。