箱庭センチメンタル
これで、果たして私は生きていると言えるのだろうか。
そう錯覚してしまうこともあるけれど。
悪夢に襲われ目が覚めることもあったけれど。
所詮私には関係のないこと。
知る必要のないことを追求する謂れはない。
無知でいる以上に楽に生きる術はない。
だから私は、決して不満など抱えてはいないのだ。
それなのに。
望んではいけないと、分かっているはずだというのに。
私は……
「雛李様、お習字のお時間です」
襖の奥からかかる声。
現実に戻されてどこか、落胆した。
それもまた、一時的な気の迷い。
自身の義務だと言い聞かせ、意思などないものだと押し込める。
ああ、それでも私は生きている。
精神さえ崩れず、確かにここに。