箱庭センチメンタル
侵入者の金髪少年
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習字の時間。
緊張にも似た、けれど確かに違う、言いようのない不快感。
ぐるぐると渦巻くそれはせり上がり、“感情”となって今にも外に現れてしまいそうだ。
不可能だ。あり得ない。
あるわけが無いと分かっていながら、居心地の悪さを空間全土に感じていた。
正面にはお祖母様。
習慣のように、決まった時のみ姿を現すけれど、この時間のみ常に同伴して私の側に付く。
筆を握る手が、汗ばむ。
自分では止められない。
焦りなどない。普段通りにやればいいだけだ。
けれど、私の動向を伺う視線に思考が萎縮されてゆく。
どれだけ回を重ねようとも、この時間だけは一生慣れることはないだろう。
「どうしました、雛李さん。ペースが落ちていますよ」
「…申し訳ございません」
どうにも、雑念が多すぎる。