箱庭センチメンタル
ふ、と息をつき、ゆっくり、瞬く。
意図的に生気を喪失させる。
私は感情のないお人形。
命じられるままにただ、動く人形だ。
目の前にのみ意識を集中する事を決めた。
無駄な力は入れず、けれど持ち手に動きを持たせる。
丁寧に、かつ力強く。
筆を滑らせた。
余計な思考は捨てる。
お祖母様は目を逸らさない。
いやでも意識が向いてしまうのであれば、自分に錯覚させれば良い。
私は気付かない、気付いてなどいない。
そう自分に思い込ませることなど、造作もないことだ。
「良い出来です。しかし、今の貴方を完成品と呼ぶにはまだ早い。覚えておきなさい」
「はい、今後とも精進いたします」
「いいえ、しなくてよろしい。お人形の貴方が熱意を持って事にあたるなど、あってはなりません。
それを当然とし、完璧にこなして見せることこそがわたくしの望む姿です。貴方は何も考えなくても良いのです。わたくしの欲するままであれば良い」