箱庭センチメンタル
開け放たれた襖。
着物の振りを大きく揺らしながら入ってきた女中に、お祖母様の眉根が深く寄せられる。
「お黙りなさい。屋敷内で走り回るなど、はしたない」
鋭く冷たい目で見据えるお祖母様の威圧感にビクビクしながら、息を整えた彼女は深々と頭を下げ、言った。
「も、申し訳ございません。ですが、緊急事態が……」
「何事ですか」
「侵入者です。屋敷内に入り込み、只今捜索中とのことです」
「侵入者?」
怪訝な顔を更に歪め、お祖母様は息を大きくつく。
「まったく、ここの警備は一体どうなっているのです。外部の侵入を許すだなんて」
「ま、誠に申し訳ありませんっ…」
「仕方がありません。わたくしも参りましょう」
ふ、と無駄のない所作で立ち上がり、出て行きかけたお祖母様は、思い出したように私を振り返った。