箱庭センチメンタル
*1.『ニチジョウト ヒニチジョウ』
お人形のように
『貴方はお人形のように振舞わなければなりません』
何十回、何百回と。
小さな頃から言われてきた。
ただ黙って見て見ぬふりを続けてきた親類。
なんて薄情なのだと冷めた目で見やり、いつしか、頼る事すら諦めた。
全て鵜呑みにして、頷くだけでいい。
表情も感情も、身なりさえ気にしない。
自尊など以ての外。
ひたすら忠実に、保身に回って生きてきた。
きっかけは何だったのだろうか。
いや、きっと初めからそんなものはなかったに違いない。
広いお屋敷で、沢山の人に囲まれていても、一人きりであることを知っていた。
捻くれとはまったく別に、自身の殻へと閉じこもるようになり、そうして常に自らを抑制する事に努めた。
表情を崩すこともなく。
時と共に、泣きも笑いも失い、声を荒げる事も無くなった。
——感情が、欠落した。