箱庭センチメンタル
見知らぬ場所に1人彷徨う。
いくら男児といえど、心細くない訳がない。
これほどまでに不安そうな彼を見放す気にもなれず。
何より、私が彼を助けたいと思っている時点で、手遅れなのかも知れない。
意思が、折れると。
直感した。
小さなため息ひとつ。
「私が送って行きましょう」
人間とは、簡単に負けてしまうものなのだと知った。
けれど。
「本当に何から何までありがとなっ」
こんなにも素晴らしい笑顔を見られるのなら、損ばかりでもない。
そう思ってしまった自分が恨めしい。
最善は、とにかく急くこと。
有余はない。
もう戻れない。
行くしかない、と自身を奮い立たせた。
お祖母様、申し訳ございません。
私は命を破ります。
心内で謝罪を述べて、揃えて置かれた下駄を履くと、庭の地へゆっくりと足を下ろした。