箱庭センチメンタル
信じること、そしてまた、諦める
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「こちらです」
程なくして目的地に到着した。
屋敷を囲う土塀沿いに、人目を忍んでここまで来たものの人と遭遇する確率は決してゼロとは断言できず。
現にここまで来る間にも、危うく鉢合わせしかけた。
自然と回り道をすることで危機は脱したけれど、どれくらい歩いてきただろうか。
木陰に入って、草木をかき分けた先には、ここに来るまで何度も見てきた、変哲ないただの土塀。
視線を下ろせば、大人1人が屈んで入れる程度の古びた木製の戸があった。
「ここ……」
私の後からついて来た彼の呟きに、振り返る。
目を細めていて、視線は何やら忙しない。
今の時間はちょうど日も高く、日差しも照っている。
眩しいんだろうか。
そんな感じはしないけれど、さして問題ではないため、そう解釈することにした。