箱庭センチメンタル
「本当は部屋出るのマズかったんだろ?」
「………え…」
「なんとなく様子おかしかったし、気になってたんだ」
そんな、まさか。
頰に手のひらを持っていったのは無意識だった。
確かめるように、指先で触れてみる。
表情に変化はない。
焦りも特にはない。
それなら何故、彼は分かったのだろう。
私の疑問に被せるように彼は笑う。
答えは、くれない。
頭にぽん、と大きな手が乗せられて、どうしたものかと思った。
視線が交わる。
この人は、なんて優しい目をするのだろう。
私を映す瞳も、そっと触れてくる手も、とても温かくて。
柔らかく包み込まれるような錯覚さえした。
抱いたものは、……そう。
それは紛れもない“安心感”。