箱庭センチメンタル



私の中に潜む悪いものを浄化して、洗い流してくれる。


私に足りない何かを、補ってくれる。


無性に懐かしくなるのは何故?



感情など捨てて失くした。


全部、忘れてしまった。


そんな私が、出会って間もないただ1人の少年に、安心している。



困惑、動揺。


……いけない、悪い兆しに向かっている。



これはいらない感情。


持ってはいけないもの。


残していては危険なもの。



優しくしないで。


真っ直ぐな目で私を見ないで。


お願いだから、踏み込まないで。



汗ばむ両の手を組み直すも、小刻みに震えてうまく収まらない。


視線を外して俯く私に彼は何を思ったのだろうか。


少なくとも、数秒は視線を感じていたけれど、顔を上げる事は叶わなかった。



やがて、彼の方から言葉を切り出す。


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