箱庭センチメンタル
「もう行くよ。留まってても何にもならないし」
「……」
何も感じない。
「じゃあな」
「……」
感じてはいけない。
「またここに来るから」
「……え…」
一瞬、訪れた起伏。
けれども、それを上回る脱力。
“またここに来る”
聞き間違いでなければ、確かにそう言った。
せっかく抜け出せるというのに、それでは何も意味はない。
自分を押し殺しても止めなければ。
「何を言って——」
「俺は諦めないから」
「……え…」
『向こうが諦めたって、俺が諦めるもんか』
まだ記憶に新しい言葉が脳裏に蘇る。
私が何を諦めるというのだろう。
私に不満はない。
決してない。
それなのに。
「……」
私はそれを主張する事はできなかった。