箱庭センチメンタル
一瞬強張った力が抜ける。
身体からすっと熱が冷めていく。
見えていたはずの光は影もない。
お人形の出来上がりだ。
長年培われた順応力はそう易々と抜けるものではない。
痛感するのは実に簡単だ。
「雛李さん、言い付けを破りましたね」
確かに恐れていた事だけれど。
私はどこかで、こうなる事を悟っていたのかもしれない。
「今までどこで何をしていたのか、簡潔に説明なさい」
全ては自分の身を守るため。
幾分か楽な選択ができたと思えるように。
後に後悔しないためにも、正直に話すことが得策。
何も考えず、答えればいい。
強制された、そう偽るのも容易いこと。
それがたとえ、お祖母様相手であっても、欺ける可能性は十二分にある。
けれども。
『俺は諦めない』
『また会いたいって思ってる』
『だからここに来る』
人に言われるがままに生きてきた私にも、僅かに残る良心が邪魔をする。