箱庭センチメンタル
彼のことを話したくない。
自然と思ってしまった、それが本音なのだとしたら。
私は彼の言葉ごと、彼を信じたい。
「あまりに屋敷内が騒がしかったので、不安で様子を見に赴いてしまいました。
言い付けを破ってしまったこと、深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」
深々と頭を下げて、お祖母様の二の句を待つ。
けれど、どれだけ待っても動きはない。
頭を上げられずに、沈黙する。
容易に訪れる静寂。
鯉がまた、跳ねた。
それを皮切りにお祖母様のため息が、静寂に慣れた耳を刺激する。
「そう。そうですか。実に残念です。
……頭を上げなさい」
言われるままに、姿勢を正してお祖母様を見上げる。
そこにあるのは、表情のない、まるで精巧に作られた能面のような顔。