箱庭センチメンタル



何を考えているのか、決して読ませない。


けれど今度ばかりは、拙(ツタナ)いながらに理解した。


ぐい、と半ば粗雑に顔を上向かされる。



これは——



「“不安”など、不要。貴方はお人形です。如何なる感情も無にし、動じないお人形。
光を通さぬ眼球も、薄ら開いた唇も、陶器のような白い頰も、わたくしのもの。一切の変化も許しません」


瞼、唇、頰と。


不気味なまでに優しい手つきでなぞられて、悪寒が走る。


「わたくしが手ずから修復することも容易いですが、生ける人形は繊細ですからね、丁重に扱わなくては。ああ、ですが聞き分けがないなら仕方ありませんね」


言いながら、唐突に笑みを浮かべるお祖母様。


唇を歪ませて笑う、それはとても不自然な動作で。


言ってしまえば、唇というそのパーツのみを、そっくり作り変えたような異様さだ。



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