箱庭センチメンタル
何も見えない。
慣れることはない暗闇。
何も聞こえない。
身じろぎしなければ完全な無音。
何も感じない。
人の気配は無論しない。
ここは、屋敷の外れにある蔵。
物置として使われることはなく、専ら使用人の折檻のために存在しているようなもの。
聞こえは悪いけれど、あいにく、これ以上のうまい言葉は見つからない。
触れる地面は、冷たく固い石造り。
無作為に動き回ってもぶつかる先は常に壁。
窓はなく、唯一の出入り口は中には取っ手さえ付いていない、外から厳重に鍵のかけられた厚みのある重い扉のみ。
何もない。
したい事もなければ、する事もない。
昔から、何かあれば叩き直しと称してよく閉じ込められた。
未だに仕置きとしてここを選ぶのは、私が暗い場所を好まないことを知ってのお祖母様の計らいか。