箱庭センチメンタル
「貴方に私の何が分かるというのです。いいえ、分からないでしょう。私が今何を望んでいるのかなど」
「っ…」
「事情を知らない貴方に元より期待はありません。この場で私が望むのは、貴方が全てを忘れることです」
暗に出て行くようにと促す。
感情、表情、繋がり。
それらのたとえ何を失くそうと、それでも皐は大事な妹。
私が足枷になり、彼女を引きずり落とすわけにはいかない。
だから私は、皐を突き放す。
「今後この場に近付いてはなりません」
「……お、姉様…」
鼻をすする音。
とうとう泣き出した皐の声が遠くなる。
重いドアが、再び閉じられた。
皐が、いなくなった。
決別。細い関係が断たれた気がした。
別段、思うところがあったわけでは無いけれど。
唐突に、胸の奥で覚えた空虚な感覚。
これは何か、と首を傾げるも、あらゆるものを失くした私には分かりそうもなかった。