箱庭センチメンタル
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「———…きろ。だい……う、か」
遠くから、誰かの声がした。
「なあ、起きろって。大丈夫か?」
誰かに案じられるのも慣れないものだ。
今すぐ目覚めたいと思うような、心地の良いその声に導かれる。
「雛李」
私の名を呼ぶ、その声の方に手を伸ばす。
ぎゅっと、包み込まれる暖かな感触。
これは、人の体温……?
ゆっくりと瞼を開けると見えてくる、霞んだ景色。
心なしか視界が開けている気がする。
綺麗な金色が、そこにはあって。
自由なもう片方の手を伸ばす。
くしゃり、触れたそれは柔らかで、吸い付くように指に馴染む。
これは何だろうか、と思っていると。
すり、とすり寄られる感触に瞬時に意識がはっきりとした。