箱庭センチメンタル
状況がいまいち呑み込めない。
目の前で、猫のように気持ち良さげな顔をしているのは誰だろうか。
否、分かっているけれど、分かりたくはない。
あくまで冷静に、触れていた手を離すと残念そうに彼は言う。
「ちぇ、気持ち良かったんだけどな。
ま、また今度やって貰えばいいか」
何やら訳の分からないことを言う。
それよりも、重要なことは彼が何故ここにいるのかということだ。
「貴方、どうして…」
目の前にいる以上、疑うのもおかしな話。
現実を受け入れて問うと、別の声がした。
「皐が呼んだんです」
視線を向けると、入り口付近に立ち、中を窺い見ている妹の姿。
その背景には、夜明けが近いのか、うっすら明るい空が見えた。
「皐、あなたが…」
近付くなと、あれほど警告したというのに。