箱庭センチメンタル
—————
今日という日が始まった。
無駄に広く、布団に茶机しかない質素な部屋。
私物自体が少ないためだろう。
我が菊ノ宮家は、古くから栄え続けている名家で、外観はまさに和の象徴。
障子や襖で仕切られた各部屋と、庭を見渡せる木目調の長い廊下。
共通の着物を割り振られた、多勢な使用人。
それなりの資産もあり、親族はお祖母様の死後、明け渡されるのを狙っていると聞いたことがある。
外へ出たことのない私でも、家内のことならある程度、分かっているつもりだ。
いつか、相続争いにも巻き込まれるかもしれない。
私ではなく、妹の皐が。
期待などしても仕方がない。
私は外れてしまったお人形なのだから。
対照に、可愛がられて真っ直ぐに育った皐は男児が産まれなかったこの家で、誰が見ても菊ノ宮の次期当主だ。