箱庭センチメンタル



尤も恐れるべきは、皐がこちら側へ来てしまうこと。


望もうが望むまいが、関係ない。


問題なのは過程ではなく、そこから通ずる結果のみ。



予測ならいくらでもできるけれど、起こってしまったことを変えることはできない。


やり直しは効かないからこそ、慎重にもなるのだ。


そんな私の思いは、届かない。




「お姉様、皐には意味がよく理解できません…」


「……分からなくとも良いのです」



想定の内。


これもまた一つの分岐点。


幸を呼ぶか、災厄となるか。



皐には必要のないもの。


知らなくてもいいもの。


一生縁のないことだと思えばいい。




安心させるように無理やり笑みを作ってみせる。


けれど、長い歳月の間に表情というものをすっかり忘れてしまった私の頰は強張り、思うように緩まない。


およそ笑みと呼ぶには程遠かったのだろう。


皐が、傷付いたように顔を歪めたのを見て悟った。


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