箱庭センチメンタル
言われて気付く。
そういえば、皐が何かを言おうとする度に私は、それを待たずに言葉を被せていた。
初めから聞き入れる気などなかった。
ほだされてしまうからと、無意識に先手を打って避けていた。
「言ってることは道理に適ってるかもしれない。話し方がすごい流暢だったし迷いもなくて、それがお前にとっての最善だったんだろうけど。
はっきり言って可哀想だ」
「可哀想…」
今更だ、と思った。
可哀想だと思えるようなことなら、これまでにも皐にしてきた。
それが彼女を助けるためだと信じて疑わなかったからだ。
けれど、ここに来て引っ掛かりを覚えた。
“皐の意見を聞き入れない”——聞く必要性を感じない。
“あわよくば言いくるめられる”——思い通りに動かせる。
“控えめで従順”——だから、扱いやすい。
これまで皐に対して抱いていたものの裏側を垣間見た気がした。