神寺様の言う通りっ!?

 帰り道。

「湖ちゃんバイバイ!」



 ………そんな笑顔で言わないでよ。

 あーあ。

 また一人…。

 ガサッ、バサッ、バサッ……。

 !

 バサッ。

「何なんですか!」

 そう、あの王とやらが来た。

「黙ってついてこい。」

 …っ。

 ここは林道。逃げ道はないけど………。

 あたしは林の中に突っ込んでいった。

 木々があたしを拒む。

 振り向くと、すぐそこにアイツが居る。

 思い切って足下の小石を拾って投げつけた。


 当たった………!


 ホッとしたのも束の間、その行為が相手の神経を逆なでした。


 今度こそ、逃げ場はない。

 嘘でしょ…ッ。

 気づけばあたしは、心の中で神寺君を呼んでいた。


 バサッ!


 神寺君だ…………。


 …ていうか、いくら林道でもこんな風にヴァンパイアが飛んでたら、みんなビビるんじゃないの?


「速水。」

 あたしを呼ぶ神寺君の声は、1オクターブ低かった。

「何…「お前バカ?」




 ………………………………………はぁ!?




「何よ、それ!」

「お前ってバカ!!!」

 ビクッ!

 あたしは、神寺君が怒鳴るのを初めて聞いた。

「お前さ、相手の神経逆なでして、バカ!?
 バカだろ。」

 ばっ、バカバカバカ……………最低すぎっ。

「危ねーことすんなよ!
 心配すんじゃんっ!」





 ………………は?

 心配……………?

 どうして心配されなきゃいけないの?

 おそるおそる顔をあげた。

 


 いつもの無表情な顔は、確かに怒っていてなんだか泣きそうにも感じられた。






 ドキッ。







 え?何?嘘でしょ…?



「怒鳴って…………ごめん。」

 神寺君は、落ち着きを取り戻していたけど、あたしの胸のドキドキは、おさまらなかった。


「危ない事、もうすんな。」

「…………分かった。」

 としか、言えなかった。

「ケガは?」

「してないしっ。」

「…………帰るよ。」

「はいはいっ。」



 あたし、どうかしてるっ!

 あんなやつにドキドキするなんて、あり得ない!




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