わたしの初カレ。


───トントン

「ゆっ、唯くん?!」

...。

振り返ると肩を叩いてきたのは唯くんじゃなかった。


...誰?


「きみ、めっちゃ可愛いじゃーん。」

「ねえねえ、ひとり?
オレらと遊ぼーぜ(笑)」


これは、ナンパですか。

人生初のナンパ...

いや、これはやばい状況じゃん。


「えっ、あの彼氏とデートしている途中で...」


「は?彼氏いないぢゃん?
振られたんじゃね?」


「彼氏はいいからさ。
俺らと遊ぼーよ(笑)」


さっきから、しつこい。

どうしよう。

少女マンガならこのシーンだと、

彼氏が助けにくるはずなんだけれど...。

唯くんが来ない。


と、思っていると後ろから足音が聞こえてきた。


「望和っ!!」


────唯くん。


「やべぇ、彼氏きた」

「イケメンじゃねーかよ。
逃げよーぜ。」


まさかの唯くん、顔でナンパ男達を追い払うとは流石だ。


「ごめんな、望和。
ちゃんと、RINEで言っときゃ良かったよな」

そう言って、唯くんが
私がトイレに行っている間に買ったのであろう絆創膏をスーパーの袋から取り出した。


「俺、ずっとそれ気になってて」

と言って私のかかとを指さした。




見ると、そこが慣れないヒールを履いたせいか

赤くなっている。




色んなことに夢中になっていたからかな。





気づかなかった...。





「俺、ばかだよな。
女の子を一人にして待たせてたなんて。」


「そんな...。」


確かに、どこかへ行くなら教えてくれれば良かったのにとは思ったけれど、


私のことを、常に気遣ってくれていた。


今日は、本当に
唯くんの優しさを改めて知ることができた。


「唯くん、ありがとう...。」


優しく絆創膏を貼ってもらって
また、ドキドキした。


ヒールから絆創膏が見えないようにちゃんと

気をつかってくれて、

しかも人が少ない場所で貼ってくれて。


これは、当たり前のことかもしれいけれど、

こんなに特別扱いをされるのは本当に初めてだった。




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