S系御曹司と政略結婚!?
艶のある黒い瞳をただジッと見ていた私は、ふと一抹の寂しさを感じ取る。
よく目を凝らして分かる些細な変化が、責める気持ちに歯止めをかけさせた。
悲しいのはこっちなのに。なぜ和也まで辛そうなのか、その理由を聞けないままで。
すると彼は立ち上がり、窓のそばまで行くと私に背を向けてしまった。
窓の向こうに広がる、緑あふれた景色をただジッと見つめている。
「華澄……悪い、今からちゃんと話す。嘘偽りはないと誓うから」
肩越しにこちらに視線を送ってきたヤツの真剣な瞳に、コクンとひとつ頷くのが精一杯だった。
少し緊張を滲ませていたのが伝わってきて。息を呑んで待つだけの私に表情を少し緩めた和也。
ふぅと小さく息を吐くと、再び景色のほうに向き直った。
「……山内とはあれ以外、本当に何もない。寧ろ、超がつくほど嫌いだ」
別れようと切り出されるのだと、もう諦めていた。それなのに、主のことを“嫌って”いる……?
「……その言葉を信じろっていうの?」
「そうだな」
傍若無人な広い背中に再び怒りが込み上げる。
だったら、何でキスするの?つまり、性欲処理に感情うんぬんは別っていうこと?
もう弁解なんていらない。身勝手な言い分なんて聞きたくない。絶対に別れてやる……!
私が口を開きかけた瞬間、向き直ったヤツの鋭い視線が飛んでくる。
「今言われたことも忘れたのか?その残念な頭は」
わざと溜め息を吐き出したヤツに苛々も頂点に達し、立ち上がった私も負けじと言い返す。
「はあ!?ちゃんと聞いてますぅ!
そっちこそ、嘘偽りはないとか言う前に行動で示したら!?」
不調であることもすっかり忘れて、こちらに近づいてきたヤツにそっぽを向く。