S系御曹司と政略結婚!?
あれほど絶対に別れてやると意気込んでいたのに、一瞬で吹き飛ばされてしまった。
また騙されてるのかもしれない。浮気者は繰り返すかもしれない。それでも、やっぱりこの腕の中から離れたくない。
「……熱上がったかも」
その呟きに和也は片腕で支えて額に手を置く。しかし、すぐ力の抜けた私を抱き上げてベッドに移した。
自分で感じていたよりもどうやら熱が高かったらしい。緊張の糸が解けた私の口からは熱い吐息が漏れる。
布団をかけてくれた和也は、ベッド脇から心配そうにこちらを見ている。
「大丈夫か?今ナースコールしたから」
「ん、だい、じょうぶ……あ、りがと」と、力なく微笑み返した。
「ごめん、妊娠で余計に体調悪いのに無理させて……」
ひどく後悔した様子の和也の発言に耳を疑った。
「い、いま、なんて言った……?なんか、妊娠って……え?誰が?」
「あ、まだ伝えてなかったな。先生によると妊娠8週頃らしい」
熱でぼんやりしていた頭も冴えたものの、「うそ……ほ、んと?」と呟くばかり。
「ああ、俺たちは親になるんだ。ありがとう」
柔らかな顔つきで答えられてもまったく現実的じゃない。だけど、和也の言葉と表情に嘘はひとつも見つからなかった。
「わ、たし、が妊娠……」
何度もその言葉を反芻しながら事実を受け入れると、じわりじわりと喜びを感じ始めた。
「ああ、可愛い子供が来年には産まれるってこと」
「……ふふ、楽しみだな」と、真っ平らなお腹を優しく撫でてみた。
妙に上機嫌な和也はここに現れた時の顔と同じ。
きっと先生に話を聞いて、喜びを隠しきれなかったのだろう。そのことも嬉しかったの。
「にしても、俺らって身体の相性抜群だな」
感動に浸るムードをぶち壊すヤツを睨みつけた。……でも、否定出来ないのが悔しいところ。
一度しか抱かれていないし、身体も丈夫ではないので自然妊娠は無理だと思っていた。
それに生理不順だから生理が来なくても気にせず、最近の不調も妊娠だと思いもしなかったの。